ペンを額に

霜月のブログ。当ブログは記事に大いに作品のネタバレを含みます。合わない方はバックしてください。

君ある故郷と半分こ④

「やぁ、シーナローゼ、もう来ていたんだね」

ラウルヴィンデお兄様は簡易鎧を身につけたまま、こちらにいらっしゃいました。
夜の海のような髪を三つ編みにし瀟洒な髪飾りで留めています。その瞳は透き通るような水色でわたくしとお揃いです。

「ラウルヴィンデお兄様、わたくしたち一年生のために上級生の方たちが素材採集をしてくださったとお姉様からお聞きしました。一年生を代表してお礼を申し上げます」
「私も一年生のときは上級生に獲ってもらったからね。シーナローゼも四年生になったら一年生のゲラースヴァーネたちのために素材採集に行くのだよ?」

お兄様は優しく笑ってわたくしを見詰めました。お兄様はとても丁寧な人です。
それはお姉様のお体が少し弱いことと関係しているのかもしれません。
領地ではお転婆娘と言われ、エックハルト伯父様のしごきに食らいついてお稽古しているわたくしにさえ、このように嫋やかな淑女に接するような態度で優しく諭します。まぁ、言っていることは少々過激ですけれど。

「明後日には進級式と親睦会があるから、大まかなことは夕食のときにでも話そうか。私は着替えてきます」
「ええ、ラウルヴィンデ」
「はい、お兄様。また後で」