「嫌かしら?」
お姉様がぽわんとした顔でわたくしの返事を待っています。
「…いえ、とても光栄なお話ですけれど、自分に務まるのか不安で」
「お仕事は大してありませんわ。昔は図書館の魔術具への魔力供給もしていたようだけど、今はどちらかというと上位領地の領主候補生たちの一種の集まりのようなものになっていますからね」
うう、それは社交というのでは…
「…少しだけ考えさせてくださいませ」
「ええ。答えが出たら教えてちょうだい。図書委員は強制ではありませんからね」
お姉様が優しく微笑んで、やっとわたくしの肩から力が抜けたのでした。
進級式は圧巻でした。
2000人もの学生たちが自らの領地の色を誇らしげに背負い一同に集うのです。
他領の学生たち、中央の先生たちのお話、広い講堂。全てが初めてのことばかりで、わたくしは期待に胸を高鳴らせます。
「ああ、ドレヴァンヒェルのクラウディオスと目が合いました」
「今年もまた共同研究に誘われるのではなくて?」
お兄様とお姉様にがっつり挟まれて、わたくしの貴族院一年生の進級式は何事もなく終わったのでした。