次は昼食も兼ねた親睦会です。
「三位アレキサンドリアより、ファランディーヌ様、ラウルヴィンデ様、シーナローゼ様がいらっしゃいました」
「シーナローゼ」
囁くようにお兄様がおっしゃって、エスコートのための手を差し伸べます。ファランディーヌお姉様はすでにお兄様の手に手を乗せています。どうやら、お兄様はお一人で二人分のエスコートをするようです。
「ありがとう存じます。お兄様」
前のテーブルには王族と思われる三人がいらっしゃいます。
おそらく真ん中の方がツェントであるエグランティーヌ様。正面から見て左側にアナスタージウス様。すると右側にいらっしゃる方がヴィクトリア様でしょうか…?
アレキサンドリアのテーブルらしいところに案内されて、ひとまず息をつきます。
「気を抜いてはいけないよ」
視線すら寄越さず、柔らかな表情を浮かべたまま厳しい注意が飛びます。
…お兄様?
口元を僅かに動かしただけのお兄様は、まるで何事も無かったかのように前を向いて、優雅に微笑んでいらっしゃいます。
わたくしは視線を戻し、気合いを入れ直しました。
一位のダンケルフェルガー、二位のドレヴァンヒェルの挨拶が済み、アレキサンドリアの順番が回ってきました。
「ラウルヴィンデ、シーナローゼ、参りましょう」
「はい、姉上」
「はい、お姉様」
小広間に入ってきたときと同じように、お兄様がわたくしたちをエスコートします。
王族の前まで来るとわたくしたちは跪いて、胸の前で両手を交差させました。
代表してお姉様が挨拶をします。
「今年も時の女神 ドレッファングーアの糸は交わり、こうしてお目見えすることが叶いましたことを嬉しく思います。こちらはシーナローゼ。わたくしの妹です」
お姉様からの目配せで、わたくしは初対面の挨拶をします。
「エグランティーヌ様、アナスタージウス様、ヴィクトリア様。命の神 エーヴィリーベの厳しき選別を受けた類稀なる出会いに、祝福を祈ることをお許しください」
「許します」
指輪に魔力を込めて、ぽわんと祝福を飛ばします。
「お初にお目にかかります。アレキサンドリアより、ユルゲンシュミットに相応しき貴族としての在り方を学ぶため、この場に参上いたしました。シーナローゼと申します。以後、お見知り置きを」
「ローゼマイン様と雰囲気が似ていますね」
まるで太陽を内に秘めてるかのようなエグランティーヌ様の温かい微笑みに自然と尊敬の念が引き出されました。
「お久しぶりですね。ファランディーヌ」
「はい、ヴィクトリア様」
同じ図書委員であるヴィクトリア様がお姉様とお話されます。
ヴィクトリア様はとてもエグランティーヌ様に似ていらっしゃいます。
豪奢な金髪は波打ち、太陽の光を放っています。
瞳はツェントよりも色濃く、蕩ける蜂蜜色です。
…はぅん、お姉様と同じ瞳。美しいですわ
「今年もアレキサンドリアの活躍を楽しみにしています」
「お心に添えるよう、誠心誠意努力いたします」