ファランディーヌお姉様、ラウルヴィンデお兄様、そしてわたくし。
全員の皿が並べられ、順番に食事が盛られていきます。
「幾千幾万の命を我々の糧としてお恵み下さる高く亭亭たる大空を司る最高神、広く浩浩たる大地を司る五柱の大神、神々の御心に感謝と祈りを捧げ、この食事を頂きます」
食前の祈りを捧げ、夕食が始まりました。
アレキサンドリアのお食事はいつでも美味しいです。
そんなことを思ったら、頭の中でお母様がいつものように胸を張りました。
その姿を愛おしそうに見つめるお父様までがセットです。
姉兄たちとたわいもない話をしたところで、お姉様が静に切り出しました。
「明後日の親睦会について話しましょうか。まずアレキサンドリアの順位は3位です。1位がダンケルフェルガー、2位がドレヴァンヒェル。そして、4位にクラッセンブルクです」
「クラッセンブルクは少し前まで3位だったんだけど、3年前に4位に落ちたんだよ。これ以上落ちることはないと思うけど対応には注意をしたほうが良いね」
「はい、気を付けます」
「壇上にはツェントとアナスタージウス様、そして二の姫であるヴィクトリア様がいらっしゃるので、失礼のないように。ヴィクトリア様は今年三年生でいらっしゃるわ」
「ヴィクトリア様はお姉様とご一緒に図書委員をされていると、この間おっしゃっていましたね」
「ええ。地下書庫は礎に登録されているものしか入れませんから。万が一領主候補生同士で諍いが起こった場合、貴族院の上級司書では対応しきれないでしょう?そのために王族や上位領地の領主候補生が図書委員として活動しています。普段から交流があればわたくしたちを呼びやすいでしょうし、司書の要望を他領の領主候補生に伝えやすいのです」
「お兄様は図書委員ではないのですか?」
「ああ、私は入ってないよ」
お兄様がニコリと微笑まれました。
どうしてでしょう?お兄様は考えることが好きで、わたくしなんかよりもよっぽど本に親しみがあるはずなのに。
「今年も図書委員のお茶会が開かれるなら、シーナローゼを新しいアレキサンドリアの図書委員としてヴィクトリア様に紹介してはどうですか、姉上」
「ええ、わたくしもそう思っていたの。どうかしら?」
「…お、王族であるヴィクトリア様とわたくしがお話をするのですか?」
コンソメスープの味がだんだん分からなくなってきました。
「ふふ、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。ヴィクトリア様はとてもお優しい方ですから」
本当でしょうか。
お父様は口にこそ出さないものの、王族にあまり良い感情を持っていないと知っています。
誰が話したことでもないですし、兄弟姉妹の間でもそのような話はしません。
でも、家族だから、そういうことは分かるのです。