ペンを額に

霜月のブログ。当ブログは記事に大いに作品のネタバレを含みます。合わない方はバックしてください。

ムレンロイエ【救いなし】

わたくしはムレンロイエ。
インメルディンクの領主候補生です。今年でわたくしは貴族院を卒業いたします。なんだか無性に張り切ってしまいますわ。

わたくしの嫁入り先はお父様がお探しになって、オースヴァルトの次期アウブに第一夫人として嫁入りすることが決まりました。まさかインメルディンクより下位の、それも小領地に嫁入りすることになるなんて……悪夢のようでありませんこと?
本当ならば隣り合う領地同士で婚姻し繋がりをより強めるところですけれど、インメルディンクは周りを上位領地に囲まれています。お父様も上位のアウブたちに強く婚姻話を持ち出すことは出来なかったようです。



領地対抗戦が終わり寮に戻ると、慌ただしくアウブから大事なお話があると会議室に呼び出されました。


「ムレンロイエ、急な話であるが其方の嫁入り先が変更になった」

なんですって!?成人式と卒業式は明日ですのに!

「お父様、では明日、どなたがわたくしのエスコートをしてくださるのでしょうか?」

「アウブ・コリンツダウムであるジギスヴァルト様だ」

「まぁ!次期ツェントと名高かった?それにコリンツダウムは三位の領地ではありませんか。インメルディンクにとってとても良いお話ですわ」

「そうだな。しかし、ジギスヴァルト様にはすでにナーエラッヒェ様がいらっしゃる。其方は第二夫人として嫁ぐことになるが良いか?」

「……仕方ありませんわ。あまりにも順位がかけ離れておりますもの」


ああ、わたくしの未来の夫は次期ツェントと有望視された方。そして三位の領地への嫁入り。リーベスクヒルフェもたまには良い仕事をしますのね。







ジギスヴァルト様は領主一族が少ない今、領地を無闇に離れることは出来ないとして婚約の魔石交換はコリンツダウムで行いたいとおっしゃいました。本当ならば嫁ぐ方の領地へ来て、親族の前で愛の言葉を交わし合わなければなりませんのに。始めての長旅で疲れた身体に鞭打ちコリンツダウムでの婚約式を恙無く行いました。ジギスヴァルト様はわたくしのことを幸運の女神グライフェシャーンに喩えてくださいました。






一年の婚約期間を経てわたくしはコリンツダウムに嫁入りしました。しかしその頃にはコリンツダウムは領地順位九位の土地になっていたのです!そして新婚だというのにわたくしはナーエラッヒェ様が子供を産むために抜ける魔力要員としての仕事を要求されました。
ジギスヴァルト様は日々の執務があるため忙しく、またナーエラッヒェ様も子育てで忙しいと、わたくしはアウブ命令でコリンツダウムの神殿長に任じられました。「神殿改革を進めよ」とのことですけれど全く何をして良いか分かりませんし、穢らわしい神殿になんか一秒たりとも居たくはありません。わたくしはインメルディンクのお父様に手紙を認め、なんとかアウブ命令を取り下げられないものかと相談しましたが「アウブを良くお支えするように」という芳しくないお返事がやってきただけでした。