その男はすでに手足が無かった。
捕縛の際と、捕縛後に騎士団によって切られたのだ。男の体には見苦しいとばかりに布がかけられていた。
エグランティーヌは眉を寄せ目を背けたい気持ちを抑え込んで、努めて真っすぐ男を見遣った。
「今から、貴方の記憶を見せて頂きます」
「……」
「それは同調薬です。全て飲んでくださいませ」
「……」
使用人が男に同調薬を飲ませ、頭に魔術具を嵌めさせる。
その瞳が閉じられるまで、男はじっとエグランティーヌを見続けていた。
エグランティーヌが男の側に寄ると、護衛騎士たちの緊張が高まるのが分かった。
四肢を奪って、意識を奪って、尚これほどまでに警戒を要する男。
……私に全てを教えてください。
エグランティーヌは額を近づけてその男、ジェルヴァージオに魔術具をカチリと合わせた。