ペンを額に

霜月のブログ。当ブログは記事に大いに作品のネタバレを含みます。合わない方はバックしてください。

記憶の底①

その男はすでに手足が無かった。

捕縛の際と、捕縛後に騎士団によって切られたのだ。男の体には見苦しいとばかりに布がかけられていた。

エグランティーヌは眉を寄せ目を背けたい気持ちを抑え込んで、努めて真っすぐ男を見遣った。



「今から、貴方の記憶を見せて頂きます」

「……」

「それは同調薬です。全て飲んでくださいませ」

「……」


使用人が男に同調薬を飲ませ、頭に魔術具を嵌めさせる。
その瞳が閉じられるまで、男はじっとエグランティーヌを見続けていた。



エグランティーヌが男の側に寄ると、護衛騎士たちの緊張が高まるのが分かった。
四肢を奪って、意識を奪って、尚これほどまでに警戒を要する男。



……私に全てを教えてください。

エグランティーヌは額を近づけてその男、ジェルヴァージオに魔術具をカチリと合わせた。