ペンを額に

霜月のブログ。当ブログは記事に大いに作品のネタバレを含みます。合わない方はバックしてください。

カーオサイファに魅入られた夜

Attention!
IF話。
あのままフェルディナンドはディートリンデと結婚。
ランツェナーヴェなんていなかった。
王族は頑張って自分たちでメス書獲得した。
数年後の領主会議で、ヴィルフリートとローゼマインの星結びをアウブ・アーレンスバッハの配偶者としてフェルは見届ける。




~フェルディナンド視点~

自分が他領に婿入りすることは諦観し納得していても、
ローゼマインが誰かの妻になり彼女の愛情を一身に受ける男のことまでは、想像出来ていなかったのが我ながら不思議だ。
彼女の愛情は自分に向けられている。これまでも、そしてこれからも。それはあまりにも当たり前のことのように思えた。
しかし、現実はどうだ。
礼拝堂の中央に敷かれた黒の布地に金の刺繍が施された絨毯の上を、一組の男女がゆっくりと進んでくる。
ヴィルフリートとローゼマインだ。
どちらも貴族的な優雅な微笑みをたたえ、緊張した面持ちはない。
髪を上げた彼女はエフロレルーメの祝福を受けたようだ。
時折、二人は視線を絡ませている。
彼女の愛情は間違いなく、新しく家族となる男<ヴィルフリート>に向けられているではないか。
体の中心が鷲掴みにされたように酷く苦しくなった。
私は?私も家族同然、なのだろう・・・?君はそう言った


星結びの儀式が終われば、すぐ社交の場に早変わりだ。
もともとローゼマインのことを良く思ってない私の妻が、わざわざ祝いの言葉に長い時間をかける訳もなく、
アウブの配偶者にすぎない私は二人に二三言葉を掛けるだけに終わった。


アーレンスバッハへ帰って来て、会議で取り決められたことをもとに執務を処理していく。
自室の隠し部屋へと入れたのは一の鐘が鳴る頃だった。
疲れた体を固い長椅子が受けとめる。
ふと、視界にドレスの裾が流れたような気がした。

四年後にはレティーツィアがアーレンスバッハのアウブとなることが決まっている。
これは王命であり覆ることはないし、覆させはしない。
拳を握った手が震えた。そうすれば、私はアウブの配偶者ですらなくなる。
領主会議で新たなアウブ夫妻の補佐として付くことになれば、もうローゼマインとは言葉を交わせなくなるだろう。


ゆっくりと目を閉じる。
「フェルディナンド様、きちんと休んでいらっしゃいますか? お仕事はほどほどに・・・」
私は魔術具を再生し続ける。
生きている心地がした。
・・・ああ、やはり彼女は未だに私のことが心配なようだと苦笑する。
ゆっくりと服を寛げれば、カーオサイファが微笑んでいた。









以上、気づいたときにはもう遅い!諦め悪くも隣の領地の次期領主夫人を想って自慰に耽るフェルディナンドでした!