ペンを額に

霜月のブログ。当ブログは記事に大いに作品のネタバレを含みます。合わない方はバックしてください。

本日は晴天なり

「何がどうしてそうなった・・・」

疑問の言葉を発せただけ褒めて欲しい
マインが、いや、ローゼマインが隣の大領地アーレンスバッハの領主となることが決まったそうだ

「何がどうしてそうなった・・・!」

今度は机を叩きつけることが出来た
不本意だが想定外の事態に慣らされた結果、知らないうちに神経が太くなっていることに気づかされた

ローゼマインが領地を移る可能性が高いとは聞かされていた
それに伴って、プランタン商会とグーテンベルクの移動
そしてなにより、ローゼマインの本当の家族も専属として移動することになっていたのだ
その下準備として采配を一手に引き受けていたのは(押しつけられたとも言えるが)、ローゼマインのことをよく知り他領の情報にも精通しているプランタン商会のこの俺だ

だというのに!!
こんな重要なことを、言づてなり、手紙なりで知らせないとはどういうことだ!?

まぁ、今後正式に通知が来るのかも知れんが、俺が知ったのは今日だった
寝耳に水とはまさにこんな状態を言うのだろう・・・

「ギュンターおじさんも相当驚いてて、というか凄く落ち込んでいます」

今最高に面倒臭くなってます、と遠い目をしてルッツが言う
なんでもフェルディナンド様がローゼマインの傍らにピタリと付き、アーレンスバッハで結婚することを仄めかしたらしい
しかも、ルッツによればローゼマインすらこの状況は想定外のものである可能性が高いという
曰く”やらかした”だそうだ
そんな情報聞きたくなかった

「・・・フェルディナンド様はローゼマイン様のことを知っていらっしゃるはずだが」

元平民と結婚すること、貴族生まれでもない彼女をアウブにするのをよく許したなと言外に言う
最初の衝撃からようやく立ち直ってきたマルクが俺の方を向いた

「フェルディナンド様はそのお命をローゼマイン様に助けられたと聞き及びました。心境の変化がおありになっても不思議ではございませんし、あの方は我々平民に対して理不尽なこと言うような方でもありませんから安心ではないでしょうか」

”安心”の部分を強調したな。全く同感だ。
確かにアレの傍に手綱があるのは俺にとっても僥倖といえる、か?

「それにしても、大領地の、アウブ・・・か・・・」

ああ、今日は空が澄み渡っているな
この後レナーテを連れて市場で実地指導というのも良いかも知れん
ギルベルタ商会は服飾だが広い視野を持っていなければ時流には乗れない
様々な要因が複雑に絡み合って経済は回っているのだ

「・・様、旦那様?」

「ああ、すまん現実逃避していた」

「左様ですか」

俺の言葉は咎められるわけでもなく、むしろ同情の籠った視線でもって受け入れられた