「これはパルゥケーキと言います。お好みで”生クリーム”とルトレーべのジャム、蜂蜜をおかけしてして召し上がってくださいませ」
私はあまりに甘いものは好まない。蜂蜜には手を出さなくて良いだろう。
「ふむ。見た目は地味だが、優しい口あたりだな」
「平民用の甘味ですからね」
見た目には注力していません、と彼女は言う。
そもそも平民が普通に甘味を食すること自体が異常なのだが気づいていないのだろう。
「この”生クリーム”とやらは初めて見る」
私が毒見を促しているのに気づいたのか、彼女は自分のカトラリーを使い生クリームをつけたパルゥケーキを頬張った。
ああ、カトラリーは上手く扱えているのに淑女がそんなに大きく口を開くのではない。
お手本を見せるように優雅に切り分け、殊更ゆっくりと口元に運ぶ。
「・・・もしかするとこの”生クリーム”は甘さを控えめにしているのか?」
「よく、お分かりになりましたね」
「見た目からもう少し甘いのではと予想していたのだが、さほど気にならなかったのでな」
「ふふん、神官長は甘すぎるのはお嫌いでしょうから砂糖は少量でとフーゴに頼んだのですよ」
褒めてくださいませと胸を張る彼女を尻目に、私は再度パルゥケーキに生クリームをつける。
私は食事に多少毒が混じっていようが表情一つ崩さずに食すことが出来る。
まして、甘味が甘すぎるからといって表情が変わるわけでもない。
食事とは毒が入っているかいないかが重要なのだ。
私の口に合うかなど、さほど重要なことではないだろうに。
自分のための細やかな気配り、それが素直に嬉しかった。
彼女の作る食事はいつも美味だった。
味だけではない何かがいつもそこには、ある。
単なる食事で胸が満たされるとはどういうことだろうか。
「お気に召しましたか?」
嬉しそうに笑む彼女が少々腹立たしい。
「・・・まあまあ、だ」
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自分で読み返して笑う
なにこのツンデレ(爆)