ペンを額に

霜月のブログ。当ブログは記事に大いに作品のネタバレを含みます。合わない方はバックしてください。

ディートリンデ姫

あるところに たいそう美しい姫君がおりました。

名を ディートリンデ姫と言います。

彼女は 美しいばかりではなく 優しく賢い姫君であったため 城中の者たちから好かれておりました。

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ある日 ディートリンデ姫は 父王さまに呼び出されました。 

婚約相手が 決まったからです。

相手は けがれた神殿にいたことのある 男でした。

しかし 優しいディートリンデ姫は 文句ひとつ言うことなく その婚約を受け入れました。

「えらい!えらい!」

「ディートリンデ姫の なんとお優しいこと!」

皆が ディートリンデ姫を褒め称えました。

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婚約式の日 男は ディートリンデ姫に 全属性の魔石を差し出しました。

男は ディートリンデ姫に 一目惚れしてしまったのです。

自分の館に招いては たくさんのお花の髪飾りを ディートリンデ姫に贈ります。

「こんなに贈られても 一度に全部つけることは 出来ないわ。 困ったこと」

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ディートリンデ姫の 成人の日。

彼女の光輝くような美しさに 皆ため息をもらします。

人々の視線を集めるなか 成人の舞を披露すると 地面にボゥと魔法陣が浮かび上がりました。

なんと ディートリンデ姫は 王候補だったのです。

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城中の者が ディートリンデ姫が王候補だと騒ぐなか 他国の王子がやってきました。

名を レオンツィオ王子と言います。

レオンツィオ王子は ディートリンデ姫の前にひざまずくと こう言いました。

「私は 不安でなりません。 あなたは あの婚約者にだまされています」

この王子は その者の真の姿を映す鏡を 持っていました。

「あの者の本当の姿を ご覧ください」

遠くにいる 婚約者の男が 鏡に映ります。

鏡を覗き込んだディートリンデ姫は 目を大きく見開きました。

なんと 鏡に映っていたのは 魔王だったのです。

魔王は 優しく賢く美しいディートリンデ姫を 我が物にするため 人に化けていたのでした。

「なんということ!」

ディートリンデ姫は あまりのことに 泣き出してしまいました。

「一緒に 魔王を 倒しましょう」

レオンツィオ王子が 力強く言いました。

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婚約者の男が フェシュピールを奏でて ディートリンデ姫に愛をささやきます。

皆が聞き惚れるなか 婚約者の本当の姿が 魔王だと知っているディートリンデ姫の心には フェシュピールの音色も届きません。

そして 魔王を倒すために ディートリンデ姫は あることを考えつきました。

「明日 城の塔に来てくださいな。 今日の演奏の お返しをしたいのです」

婚約者の魔王は ディートリンデ姫の言葉を 一切疑わず 喜んで返事をしました。

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ディートリンデ姫は 部屋を出ると レオンツィオ王子のところに駆け込みます。

「明日 魔王が 城の塔に行くようにしたわ!」

「では そこで奴を倒しましょう!」

ディートリンデ姫はうなづくと レオンツィオ王子を見つめました。

ディートリンデ姫のことを心から心配し 力を貸してくれる 真面目で 誠実な王子に 姫はいつのまにか惹かれていたのでした。

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翌日 姫の言葉どおりに 城の塔へのこのこやってきた魔王。

ディートリンデ姫はどこにいるのかと きょろきょろとあたりを見廻します。

「魔王め! よくもディートリンデ姫を だましたな!」

物陰に隠れていたレオンツィオ王子が 颯爽と魔王の前に身を躍らせました。

そして 特別な銀の剣で一刀両断にすると 恐ろしい断末魔をあげて 魔王は塵と消えてしまいました。

魔王といえども 王子と姫の真実の愛の力には 勝てなかったのです。

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「ディートリンデ姫 魔王を倒した私を どうかあなたの婚約者にしてください」

「もちろんですわ。 レオンツィオ王子」

そして ディートリンデ姫は王になるために レオンツィオ王子と仲良く 中央へ行きましたとさ。



ゆるげん、ゆるげん。