いつになくローゼマインがそわそわしていたので、また何か思いついたのだろうと目星をつけ魔力供給のときにでも聞き出そうと思っていた。
「フェルディナンド、少しかがんで下さいませ」
そう言われたのは、礎への魔力供給が済んだ後。
疲労感に包まれながらも、側近のいないこの場所で早々に聞き出してしまったほうが後のためだと重々に知っている。
「なんだ……?」
側近さえ排し、尚且つ小声で話さなければならないほど常識外れなことを言い出すつもりだろうか。魔術具を握らせた方が良いか?
腰のポーチを探る。
彼女が近づいて……
ちゅ
「きゃ♡『キス』しちゃった」
パタパタパタ……
虹色の油膜の向こうへ消え去る彼女。
「……は?」
私は何が起きたのか理解するまで、ポーチに手を入れたまま固まっていた。