いつのまにか自室が家族からの贈り物に溢れてることに気づいた。
マントを私に着せかけようとユストクスが近づいてくる。
私の顔を見た瞬間ユストクスの動きが止まり、驚きの表情を晒す。珍しいな。
「どう、なさったのですか。フェルディナンド様」
何を言っているのか。そういえば頬に違和感がある。
手をやると指が濡れた。涙?
慌ててユストクスの問いかけには答えず隠し部屋へと入る。
「なぜ涙が・・・?」
知らない間に涙が零れていたなど今までには無い。異常事態である。
しばらくして隠し部屋から出ると、心配そうなユストクスがいた。
「今あったことは他言しないように」
「何か御憂慮されることでも?」
「いや、何もない。本当だ。…ただ」
「ただ?」
「いろいろなものが目に入ってな…。マントやら、他にも」
「ああ…」
それだけでユストクスは全て理解したようだが、生憎と主である自分が理解出来ていない。
それを察したのだろう、優秀な側仕えはそっと答えを教えてくれた。
「嬉し涙、でございましょう」
これが。
あの日、マインが流した美しい涙と同じものなのか。
あのように誰かを想い。誰かを守り。誰かから愛されているのか。
絶対に手に入ることのないものとして諦めていたもの。
それが。こんなにも。私の中にもあるというのか。
ユストクスの手によって、マントが留められる。
美しい全ての女神の色であり、
アレキサンドリアの色であり、
私の、愛する家族の色である。