ペンを額に

霜月のブログ。当ブログは記事に大いに作品のネタバレを含みます。合わない方はバックしてください。

本好きの下克上⑧

本当に作者さんの頭がどうなってるのか知りたい・・・

「同じ物事でも人の数だけ見え方がある」というのは理解できるのだけども、それをいざ書いてみろとなると絶対に難しい。

見る者の生い立ち、性格、立場、考え方、大事にしているもの、嫌いなもの、子どものときの夢、一番感動したこと、果ては好きな食べ物まで予め把握しておかなければ、その者が見たこと、感じたことは表現できないからだ。
つまり、その人が生まれてからどのように生きてきたのか全て知らなければ(その人物を主軸として考えなければ)、周囲との関わりを物語として書けないのである。


何通りもの視点から書かれた本というのはもちろんたくさんある。
しかし、「本好きの下克上」は物語の深みがずば抜けている。
ぶっちゃけると、複雑すぎるほどだ

「本好き」のなかでよくこんなことがある。
A→B←C
AのBに対する評価とCのBに対する評価がまったく違う。恐ろしいほどに違うということ。
なぜこんなにも評価が違うのかと言われれば、結局のところAとCが別人だからとしか言いようがない。
AとCの、生い立ちが、価値観が、正義が、立場が違うからだ。


物語の主役(準主役)に過去があるのは当たり前である。許せないこと、叶えたい望みがあるのも。
でも、それは本当なら物語に出てくるどんな役の者でも、もっているものではないだろうかと「本好き」は気づかせてくれた。
名もない役も過去はあるし、叶えたい望みもあるのだ。
それらを丁寧に作り上げ、物語を織りなしているからこそ恐ろしいほどの数のキャラクターが登場する「本好きの下克上」はこんなにも複雑怪奇で魅力的な物語になるのだろう。