「ふぇ、フェルディナンド様……!あ、明かりを消してくださいませ!」
涙声でローゼマインが懇願する。
ここはアレキサンドリア。アウブ夫妻の寝室。
闇の神が大きくマントを広げ、光の女神を覆い隠す時間。
けれども今、夫婦の寝台は魔術具の明かりが爛々と、全てを照らし出していた。
荒い息遣いを漏らす唇。天幕の内を甘い香りで満たす乱れた髪。
そして、胸元を肌蹴られ露わにされた、ゲドゥルリーヒの豊穣。
「……今日は、明かりを落とすつもりはない」
ローゼマインの懇願を無視し、太腿を愛撫する。
柔肌は薄く汗をかき、しっとりと手に吸い付いてくる。
太腿にかけた手に力を込めると、いとも簡単にシュツェーリアの盾は砕かれた。
目の前に甘い蜜を湛えるゲドゥルリーヒの杯。
貴色に染まり、ぬらぬらと蜜を零してはエーヴィリーベを招いているようにしか見えない。
溢れる蜜を飲み干すべく、そっと杯に口付ける。
「あっ……んぁ!」
クチュクチュと舌を使って蜜を絡めとれば、程良い甘さが口腔を満たした。
ビクビクと震える太腿をあやすように撫でさする。
「はんっ……!……ん、ああっ!」
蜜がさらに溢れ出してくる。
美しいその痴態を、今宵は余すことなく眺めるのだと思うと胸が高鳴る。
喉を十分に潤したら、杯の上部に実った愛らしい果実を探る。
指の腹でそっと皮を退け、果実を剥き出しにする。
ぷくりと熟れた小さな実を舌でつつくと、女神が至上の歌を歌い出した。
「ひゃうっ……!んっ…んっ、ああん!」
背を弓なりにしならせ、その豊穣を見せつける。
強請るように、煽るように、ふるふると豊穣を揺らす様はいじらしくもあり悪辣でもあった。
脳髄を焼くようなその光景に魔力が渦巻き、下肢が熱くなるのが分かる。
悶える彼女を見詰めながら、舌を小刻みに動かし時々ぐうるりと円を描くようにする。
歯を使って優しく撫でたあとに唇で吸い付けば、じゅっと蜜を溢れさせた。
体を起こしてローゼマインに口付けをする。
最初は触れ合わせるように、そして徐々に啄むように。
やがて舌で唇をなぞれば、瞬かな躊躇いの後そっと開かれた。
まるで花が綻ぶようなそれに、私は蝶になったような心地さえして花芯を辿り夢中で蜜を吸う。
彼女の頤に添えていた手を徐々に降ろし、鎖骨を撫でて、その下へ。
輪郭を辿った後、両手でその豊穣を揉みしだく。
「ああっ……ん」
首を振り快楽を逃がそうとしているのだろうか。
そんなことはしなくて良いので、口付けの続きを。
やわやわと指を飲み込む豊穣は、まさにゲドゥルリーヒの寛容さを表しているだろう。
たっぷりとその感触を楽しんだ後、豊穣の頂きを親指と中指とで摘まむ。
と同時に、絡ませた舌と指先から魔力を流した。
「ひゃん…!んっ……はふ!あぁ…!」
頭を枕に押し付けて浮き上がろうとする上体を、自分の胸板で寝台に押さえ付ける。
私達の魔力はほぼ同質で互いに快楽しか与えない。
反発も無ければ、不快さも無い。
コリコリと頂を弄りながら舌からも魔力を流し続ける。
次第に瞳が虹色がかり、息が上がり、焦点が怪しくなってくる。
つまり、私の魔力はローゼマインにとって媚薬のようなものなのだ。
その逆も、また然りであるが。
口付けをしたまま、杯から止めどなく蜜が溢れていることを確認し、そのまま指を咥え込ませる。
「う、ぅん…」
怯える彼女のために内側からも魔力を流す。
途端に杯が収縮し、指を締め付け始めた。
このあたりで、魔力を循環させたほうが良いだろう。
「ローゼマイン、今度は君から私に魔力を流してみなさい。私が舌で魔力を流したことと同じことをすれば良い」
魔力が溜まって切羽詰まっていたのだろう。
ローゼマインは私が再度口付けると自ら舌を絡めさせてきた。
そして私の舌を捕らえると容赦無く甘い魔力を注ぎ込んできたのだ。
お互いの魔力が循環する。
互いにとっての媚薬を、互いに注ぎ込む。
「……っやん!ふっ、あっ、あついっ……!」
快楽は極上。
質も良ければ、相性も良い。
すでにローゼマインは自ら脚を大きく広げ、体は火照り、瞳は興奮でさらに艶めいている。
杯は三本目の指を飲み込み、溢れる蜜はその抽挿を容易にさせていた。
杯のなかの指を巧みに動かせば、美しい楽器は淫靡な音色を奏で続ける。
「あっ!も、もう……」
締め付けがきつくなり杯がきゅう、と引き絞られた。
一拍の後、彼女の体が弛緩する。
十分に魔力を蓄えた剣は聳り立ち、奉納の時を待っていた。
ゲドゥルリーヒの杯にエーヴィリーベの剣をゆっくりと差し入れる。
「ん……!」
甘い魔力に満たされた彼女の杯は蕩けるように気持ちが良い。
剣が直接彼女の魔力を感じ取り、気を抜くとすぐに達してしまいそうになる。
息を吐き、時間を掛けてゆっくりと全てを収めていく。
「大丈夫、か?」
上気した頬を指先で軽く撫でるとローゼマインがゆるゆると瞼を上げ、コクリと頷いた。
そのまましばらく髪を梳いて、ローゼマインが圧迫感に慣れるのを待つ。
少しすると、おもむろにローゼマインが私の背中に手を回してきて微笑んだ。
背中を数回撫でられて、きっと「動いても良い」という合図なのだろうと思い、私は了承の印に彼女の唇に軽く口付けを落とした。
ゆっくりと剣を引いては、押し入れる。
剣先から魔力を少しづつ流し彼女を染めていく。
「ああっ!」
苦しそうに眉を顰め、悲鳴が上がる。
剣を磨くように内部が収縮し、奥に奥にと誘い込んでくる。
堪らずに少し腰を引いてから、強く突いた。
「きゃうん…!」
ビクンッと体を震わせ、杯がきつく締まる。
新たな甘い蜜が絡みつきグラマラトゥーアも悩むほどの快楽に苛まれる。
「フェルディナンドさまぁ、」
舌を絡め合いローゼマインの魔力を貰う。
反対に剣で魔力を注いでいく。
「あぁん………きもち、い…」
ぐちゅぐちゅと剣を抜き差しし、時折、中をかき混ぜる。
剣の切っ先が杯の奥。泉の入り口に辿り着けば、腰を連続して強く押し付け、そこをぐりぐりと攻め上げた。
「あっ…!あっ…!そこ、やぁ!」
涙を浮かべたローゼマインの体の奥から、今までとは比べ物にならないほど高濃度の魔力が溢れ剣を包みこむ。
「くっ……!」
暴力的な快楽を剣と言う敏感な部位で受け止めるのが精一杯で、理性は跡形もなく霧散した。
深く挿入する度に、肌と肌がぶつかる乾いた音が天幕の内側で響く。
互いに染め合い、抽挿を速めていく。
杯は剣にいやらしく吸い付いて、その刀身をこれでもかと磨き上げる。
フェルディナンドの腰をローゼマインの脚が挟み込んで吐精を促した。
一層激しく腰を打ち付けるようになり、剣を収める杯が妖しく蠕動した。
「うっ……!」
「っ!ゃああん!」
びくんびくん、と二人の体が衝撃に震え、白い眷属が杯の中に放たれた。
長い嬌声が響き、静寂が落ちる。
ローゼマインのなかにフェルディナンドの高濃度の魔力が吐き出されたためだろう。
彼女は半ば放心状態で、瞳はどこも映していない。
それでも本能の為せる技か、最後の一滴まで健気に眷属を搾り取った。
どくんどくん
心臓の早鐘が聞こえる。
いつも薄ぼんやりとした明かりのなか、見えない彼女の反応に不安だった。
自分の行為が彼女を悦ばせているのか、全くそうではないのか、正確に知りたかった。
不安はやがて恐怖に変わる。
彼女に変な八つ当たりをする前に確かめなければいけないと思った。
眠った彼女の額から髪をよけると、そこに長く口付けを落とす。
彼女の汗の匂いと甘い香りが鼻腔を擽り、額の熱さと身に馴染んだ魔力を唇に感じた。
明日、起きた彼女に全て話そう。
私が何を考えていたか。
彼女ならきっと許してくれる。
自惚れでも良い。
私は幸せだ。
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