ペンを額に

霜月のブログ。当ブログは記事に大いに作品のネタバレを含みます。合わない方はバックしてください。

二人のフェルディナンド③

男が出て行ってからしばらくすると急に瞼が重くなるのを感じた。
「ああ、帰るのだな」と自然と理解した。
すぐに意識が途切れるものだと思っていたが、なかなかそうはならない。
行きは急だったが、帰りはゆっくりらしい。
規則性が全く分からないが、神々にそのようなことを求めても無駄なのだろう。

一応過去の自分に暇を言おうと机の上にあった紙を小さく切り取り、ペンを走らせる。
「全ては元に戻った。問題は無い」
隠し部屋で交流した記憶は消えるかもしれないし、消えないかもしれない。
どちらの状況でも支障のない文言を残した。









「フェ…ディ………様!フェル……ナンド様!」

「ん……」

「フェルディナンド様!」

愛しい。
愛しい者の声がする。
しかし眩しくて、とても目を開けられない。
早く見たいのに、見れない。もどかしい。
光源を遮るように手を翳すと、体の上に重みがかかった。

「良かった。良かったです」

もしかして、君はまた泣いているのだろうか。
薄く瞼を開けば、目の前に美しい濃い金の瞳があった。
じっとこちらを見詰める彼女は私の大事な宝である。
彼女の頬に手を添わせれば、その上から彼女の手の平が重なった。


ああ本当に、無事で良かった。












((あとがき))

フェルディナンドの最大の敵はフェルディナンドのような気がします。
フェルディナンドは父親との約束のためにあらゆることを犠牲にしてきた人ですけど、ロゼマの返答次第ではロゼマを処分しようとしてた人がロゼマに愛を乞うって図々しいですよね(フェルを批判してるわけじゃないです)
というより、フェル自身その自覚があるから、最後の怒涛の尽くし祭りなんでしょう(爆)
フェルディナンドが父親との約束を守ろうとしたのは良いんですよ。フェルディナンドの望みですから。でもその望みに巻き込まれ死んだ人も相当数いる気がします。
う~~ん、これは正しいとか正しくないとかの話ではなくてですね。
つまりフェル自身の気持ち?の問題であり、
「あなたは過去、自分で殺めたかもしれない人を伴侶に望みますか?望めますか?」ということなんですよ。

他人が思うよりフェルディナンドの精神状態は苦しいのではないか、と思いました。