昔の私はまるで綺麗な人形のようだった、と妻に言われたことがある。
それは心地よい疲労感に包まれた、シュラ―トラウムに招かれるまでの寝物語。
今は少しでも変わったのだろうか。
隠し部屋へ入ると、案の定妻はそこにいた。
「ローゼマイン」
呼び掛けても微動だにしない。
いつものことだ。
「ローゼマイン」
夜闇のように全てを覆いつくす濃紺の絹の髪。
ガラスのようにキラキラと光る瞳はただ静に本に落とされている。
「ローゼマイン」
私は隣に腰を下ろす。
美しいその陶磁の肌に手のひらを重ねた。
「ローゼマイン
……なぜ、死んだんだ」